ネット企業殺到、「AIスピーカー商戦」の行方

 


10月6日発売の「グーグルホーム」はビックカメラ有楽町店で大々的に展開されていた(撮影:今井康一)

「OK、グーグル。今日のニュースは?」「クローバ、パパにLINEを送って」

10月5日、グーグルとLINEの米日ネット企業大手がそろって、AI(人工知能)を搭載したスマートスピーカーを発表した。「グーグルホーム」と「クローバ ウェーブ」は共に1万4000円前後で、価格でも対抗した形だ。

IT大手が続々スピーカーを発表

米アマゾンもAIスピーカー「アマゾン・エコー」を年内に日本で発売する。日本上陸は未定だが、米アップルも今年、「ホームポッド」を発表。米国では2014年発売のエコーが累計販売1500万台に達したとの現地報道もあり、AIスピーカー市場が急拡大している。スマートフォンに続く新たなデバイスをめぐる戦いが、ようやく日本でも始まる。

AIスピーカーは、話しかけるだけで音楽の再生や調べもの、家電の操作などを行える。その“頭脳”が、音声アシスタントと呼ばれるAIだ。人間の言葉を文字化する音声認識と、文字化した情報を言語として理解する自然言語処理の技術が土台となっている。

日本導入を急いだのがグーグルだ。今年5月から音声アシスタント「グーグルアシスタント」の日本語版をスマホで使えるようにした。徳生裕人・製品開発本部長は、「スピーカーの発売に向け、日本語版の改善を進めてきた」と話す。

英語で開発が始まったグーグルアシスタントの日本語対応において、ハードルとなったのは大きく2つ。1つは、日本語が文脈に依存していること。「主語がなかったり、省略した言い方が多く、それらをクリアにするのは大変だった」(徳生氏)。

もう1つが、抑揚だ。「通常人間が発声しないようなものはなくなってきたが、固有名詞の抑揚が課題。ただ音はデータなので、学習し改善していく」(同)。

グーグルは音声認識で一日の長

スマホでの音声検索で実績があるグーグルは、応答の精度に一日の長がある。米コンサルティング会社ストーンテンプルによれば、グーグルアシスタントに英語で質問した場合、応答した比率は68%、そのうち正しい返答は90%を超えた。一方、アマゾンがエコーに搭載している音声アシスタント「アレクサ」は応答率が20%にとどまる。


グーグルホームとテレビを接続する設定をしておけば、ユーチューブやネットフリックスなどの動画の再生を声だけで指示できる(撮影:今井康一)

グーグルの強みは、カレンダー、マップ、翻訳、ユーチューブなど、使える自社サービスの幅広さにもある。多くのユーザーが使うことで、データが集まり、AIの精度も高められる。「現時点で潜在力があるのは、アマゾンよりグーグルだ」と、米シリコンバレーのベンチャーキャピタル、スクラムベンチャーズの宮田拓弥代表は評価する。

自社サービスと音声アシスタントをつなぐのは、LINEも同様だ。ニュースや音楽の配信、そしてLINEでのやりとりも可能。同社の舛田淳取締役は「日本の住環境に最も適したものを造れる」と、日本を拠点とする長所を強調する。だが、「規模や技術的な蓄積を考えると、他社より優位に立つのは容易ではない」(前出の宮田氏)との声もある。

今後、AIスピーカーや音声アシスタントの競争優位性を左右しそうなのが、外部の開発者が手掛ける付加サービスだ。スマホにおけるアプリともいえ、アマゾンは「スキル」、グーグルは「アクションズ・オン・グーグル(AoG)」という名前で対応サービスの拡充を急ぐ。すでに米国ではタクシーを呼んだり、出前を頼んだりすることが可能だ。

日本でも開発に乗り出す企業が続々登場。AoGには、グルメサイト「食べログ」(カカクコム運営)、住宅情報サイト「SUUMO」(リクルート住まいカンパニー運営)、レシピ投稿サイト「楽天レシピ」(楽天運営)など大手の参画が際立つ。

アマゾンも、スキルのパートナーをすでに公表。ヤフーやクックパッドに加え、通信キャリアー、金融、鉄道など、非ネット系の大手企業の名がずらりと並ぶ。

こうした新たなプラットフォームへの早期参画のメリットは何か。楽天は「詳細なレシピを見るために自社サイトを訪問するユーザーを増やしたい」(同社)と、顧客との接点増を期待する。

音声AIは必須トレンド


アマゾンは「エコー」の派生品を数多く発売してきている。デジタル目覚まし時計のような「エコー・スポット」が最新製品だ(写真:Amazon)

デジタル領域のコンサルティング会社、プリンシプルの中村研太・常務取締役は、「音声アシスタントは、避けようのないトレンド。特にネット企業は、この技術の活用抜きに生き残ることは難しい」と指摘する。カカクコムも、「グーグル以外のサービスにも積極的に取り組んでいきたい」(同社)と前のめりだ。

とはいえ、グーグルやアマゾンと、コンテンツ提供企業の関係がいつまでも良好とは限らない。「音声認識の域を出ない現在のAIが、学習効率の高い本格的なAIへと進化すれば、(グーグルやアマゾンなど)プラットフォーマーが直接、コンテンツを収集・評価・整備する領域で力を持ちやすくなる。これは、コンテンツ企業が最も恐れることだ」と前出の中村氏は言う。


当記事は「週刊東洋経済」10月21日号 <10月16日発売>からの転載記事です

AIスピーカーは、音声アシスタントに触れる入り口の一つにすぎない。グーグルやアマゾンは、音声アシスタント搭載の商品群を広げている。新たな商機を狙い、プラットフォーマーに加え、コンテンツ提供者など多くの企業を巻き込んだ競争が加速しそうだ。





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