写真を撮るときの失敗で最も多いのが「ブレ」による失敗です。その原因は、光の量が不足していて(つまり暗くて)、被写体や手ブレを止めるだけのシャッター速度にならなかったから……というのがいちばん多いケース。つまり、シャッター速度を速くできれば、ブレによる失敗のほとんどは解消できることになります。その具体的な解決法は、ISO感度(※1)を高くして、絞り(※2)の数値を小さく設定することです。

※1:撮像センサーの、光に対する敏感さの度合い。この数値が高いほど少ない光でも敏感に反応するようになりますが、そのぶんノイズも増えやすくなります

※2:レンズ内を通る光の量を調整するもので、通常、F+数字でその度合いが表されます。この数字が小さいほど、レンズを通る光の量が増え、シャッター速度が速くなります

 

で・す・が、今回は“あえてシャッター速度を遅くして被写体をぶらしてみよう!”というお話。うまくブレを使うと、ちょっと上級者のような写真が撮れますよ! 本稿ではそうした低速シャッターを生かした写真の撮り方や、便利アイテム「NDフィルター」について解説していきます。

 

「NDフィルター」っていったい何? どういうときに使うの?

シャッター速度を遅くするには、ISO感度をできるだけ低くして、絞りの数値をできるだけ大きくするということになります。ただ、明るい晴天時の日中などは光が強いため、ISO感度を下げて絞りを絞ってもシャッター速度がそれほど遅くならないケースも少なくありません。そうしたときに役立つのが、今回紹介する「NDフィルター」です。

↑NDフィルターは黒っぽい光学フィルターで、被写体の色を変化させずに光の量だけを減らすことができます。効果の度合いにより、数種類の濃さの製品が用意されています(写真はND8のフィルター)

 

NDフィルターはNeutral Density Filter(中立の濃度のフィルター)の略で、見た目にはただの黒っぽいフィルターですが、被写体の色に影響を与えずに光の量だけを減らすことができます。使い方は一般的なレンズの保護フィルターなどと同様に、レンズ先端にねじ込んで使用します。

 

NDフィルターは濃度により種類があり、製品のパッケージやフィルター枠に「ND8」や「ND16」といった数値が記されています。この数値は、入ってくる光を何分の1にするかを示しており、例えばND8であれば光を1/8にする効果があり、これをシャッター速度にすると3段分(※3)遅くすることができます。例えば、NDフィルターなしで1/15秒となる場合、ND8を使用すれば1/2秒で撮れるといった具合です。

※3:シャッター速度1段分とは、シャッターを用いて撮像センサーに光を当てる時間を2倍(あるいは1/2倍)にすること、あるいはその数値。例えば、1/30秒から1段明るくすると1/15秒、逆に暗くすると1/60秒となります。ちなみに2段だと4倍、3段だと8倍の露光時間が必要

↑ほとんどのNDフィルターには、上の写真のようにフィルターの枠にND8やND16といった数値が記されていて、光の量を何分の1にできるかがわかるようになっている

 

↑左がND8で右がND32。ND32のほうが濃度が濃くなっていることがわかります。ND8がシャッター速度にしておよそ3段分、ND32がシャッター速度にしておよそ5段分の効果があります

 

このように、NDフィルターは光の量を制限してくれるので、“シャッター速度を遅くしたいのに明るすぎてできない!!”という場面で活躍します。あるいは、より遅いシャッター速度を使用できるようになるので、その表現を強調できるという効果もあります。

 

シャッター速度を遅くすると、どんな写真が撮れる?

では、シャッター速度を遅くするとどんな写真が撮れるのでしょうか? 代表的なのが渓流や滝、噴水といった「流れる水」の写真です。例えば噴水は、高速シャッターで撮ると水が玉のようになって写り、シャッター速度が遅くなるとそれがぶれるために水が動いているように写ります。さらに低速のシャッター速度(概ね1/15秒以下)になると、白い糸が流れに沿ってあるかのような写りになります。実際の作例で見ていきましょう。

上の写真はシャッター速度を1/8000秒にして水の動きを止め、下の写真はシャッター速度を8秒にして水を大きくぶらしています。このように、特に水はシャッター速度の違いにより写りが変化し、同じ構図でも写真の印象が劇的に変わります。表現の意図に沿ったシャッター速度を選ぶようにしましょう。

 

続いて、NDフィルターの有無や濃度による違いを見比べて見ましょう。

いちばん上の写真は、ISO感度を下げて絞りの数値をできるだけ大きくして撮影。シャッターを1/4秒まで遅くすることができましたが、水の動きが中途半端に止まって写っています。2番目の写真は、同一条件でND8フィルターを使用。シャッター速度は約2秒。かなり水がぶれて、水か流れている様子がわかります。3番目は、ND32を使用。約8秒の露光で水の流れがなだらかに写り、糸が流れているかのような写りになっています。

 

このほか、街や雲などを撮る場合も面白い効果が得られます。街を撮ると、歩いている人やクルマが大きくぶれて、それらの動きが感じられ、その一方で街にある建物などの様子が際立って見えます。雲は動きが遅いので、長時間の露光が必要になりますが、空の雲が増えたかのような写真に仕上がります。

 

ちなみに、日中以外の夕景や夜景では、走るクルマの光跡を撮るといったことが可能です。この場合は、よほど低速で撮影するのでない限りNDフィルターは必要なく、ISO感度と絞りを調節して低速シャッターで撮ることができます。

↑夜の街並みなど、暗い条件ではNDフィルターは必要なく、ISO感度と絞りの調節だけで低速シャッターで撮影できます。上の写真では、感度をISO64に設定して絞りをF14まで絞り、30秒の長時間露光を行いました。それにより、道路を走るクルマのテールライトなどが光跡として写っています

 

同じブレでも大違い!! 失敗写真とカッコイイ写真の差

ブレを使った写真を撮る際に気をつけたいのが、シャッター速度が遅くなったことによる「手ブレ」。“ブレを生かす”といっても、手ブレによって写真全体がぶれてしまっては単なる失敗写真のようになってしまいます。基本的には三脚を使い、動いているものだけをぶらすようにするとよいでしょう。

120㎜相当の望遠でND32フィルターを使用して1/3秒で撮影。上の写真は手持ちで撮ったため、手ブレで水だけでなく岩もぶれてしまいました。三脚を使った下の写真は、水だけがぶれて糸のような流れに写っています。最近のカメラは、手ブレ補正が強化され、手持ちで撮れるシーンも増えましたが、1/15秒以下の低速シャッター撮影や、望遠レンズ使用時などは三脚を使ったほうが安心です。

【発売前レビュー】ほとんど真っ暗な「ND1000」って何に使うの?

通常のNDフィルターは、前にも記したようにND8~ND64程度までの濃さの異なる製品が用意されているのですが、3月に行われた「CP+2018」でマルミ光機が発表した「EXUS NDフィルター」(2018年夏頃発売予定)は、ND4~64までの製品のほかに「ND500」「ND1000」という製品を用意。ほとんど真っ暗なND1000ですが、いったいどんな場面に有効で、どんな仕上がりになるのでしょうか? 発売前の製品をお借りすることができたので、早速使ってみました。

↑ND1000フィルター。非常に高濃度で、フィルターの向こう側がわずかに見える程度です。そのため、光学式のファインダーではフィルターを装着したままでは構図の確認などが難しく、撮影時にレンズに着けて使用することになります

 

まずND1000の使用感ですが、とにかく濃度が濃く、一眼レフの光学ファインダーでは、視野を確認するのが難しくなります。そのためEVF搭載のミラーレスカメラか、ライブビューでの撮影がおすすめ。するとカメラの側で明るさを調整(ゲインアップ)してくれるので、AFを含めてほぼ問題なく撮影できます。どうしても光学ファインダーで撮るという場合は、フィルターなしで構図合わせやピント合わせを行い、撮影直前にフィルターを装着して撮るとよいでしょう。

 

今回はオリンパスのミラーレスカメラ「OM-D E-M1 MarkⅡ」にこのフィルターを使用して撮影しました。すると、自動露出ではやや暗めに写るケースはありましたが、その場合も露出補正やマニュアル露出を使用することで、問題なく撮影できました。

↑EVFや背面モニターでのライブビュー撮影では、ゲインアップして露出を合わせた状態での表示となるため、十分に明るい被写体であれば、問題なく視野を確認することができます。ただし、今回使用した限りでは、露出は多少暗めに仕上がる傾向がありました

 

このフィルターを使うと、日中でも15秒や60秒といった長時間露光が可能になります。具体的には、効果がシャッター速度にして約10段分なので、1/60秒の露光がフィルターの使用で15秒の長時間露光になるといった具合です。この長時間露光によって、水の流れは極めてなだらかな写りになりますし、大きく波打つ海は、凪の海のように写せます。

いちばん上の写真は、プログラムオートで撮影したもの。ISO感度設定もオートにしているため、感度が上がりシャッター速度は1/160秒で川が波打つ様子が確認できます。2番目の写真は、ISO感度を下げて絞りを絞って、シャッター速度を1/6秒にして撮影。波打つ水面がぶれているのがわかります。3番目は、ND1000フィルターを使用して、シャッター速度を60秒にして撮影。水面は波が無数にぶれ、かなり滑らかな状態で写っています。

 

↑上の比較写真と同じ場所で夕方に撮影。ND1000を使って60秒の露出にすることで、水面をなだらかにでき、夕方の静かな雰囲気を演出できました

 

ND1000を使った長時間露光なら、水の流れだけでなく、こんな使い方も可能。街を歩く人がかなり消えて、街並みそのものが際立ってきます。

上の写真は、NDフィルターなしでシャッター速度1/15秒で撮影しています。街行く人々が数多く写っています。下の写真はND1000を使用してシャッター速度は60秒。立ち止まっている人以外はほとんど消えてしまい、クルマもテールライトの光跡のみとなっています。このように、低速シャッター使えば、街を行き交う人が急にいなくなってしまったような不思議な描写も可能です。

 

NDフィルターの選び方と注意点

このように低速シャッターにより、変化に富んだ写真が撮れるNDフィルターですが、購入の際には少し注意点があります。

 

まず、使用するレンズに合ったフィルター径の製品を選ぶことは、ほかのフィルター類と同様。次に滝の撮影など水辺のシーンで使うことの多いフィルターなので、撥水コーティングや防汚コーティングが施され、水滴や汚れが素早く拭えるもにしておくと安心です。

 

このほか、フィルター枠などの光の乱反射を抑えたデジタルカメラ対応の製品だと、逆光などのシーンでもコントラストの低下が抑えられます。今回使用した、マルミ光機の「EXUSシリーズ」の製品などは、こうした条件をクリアしていておすすめです。

 

NDフィルターで表現の幅がグッと広がる!

低速シャッターでの撮影は、手ブレやカメラブレに気を付けて撮れば、肉眼では見ることのできないユニークなシーンを撮れるのが魅力。その際、NDフィルターがあれば、より長時間の露光が可能になって効果を強調できます。

 

また、一眼カメラで動画を撮影する際に滑らかな映りにするには、シャッター速度を概ね1/100秒以下に設定する必要があるのですが、そうした場合にもNDフィルターは活躍します。

 

そのほか、大口径レンズを絞り解放にして撮影する場合にシャッター速度を最高速(1/4000秒や1/8000秒)にしても、露出オーバーになってしまうケースが少なくありません。そうしたシーンも、NDフィルターが活躍します。

↑F1.4やF1.8といった大口径レンズを絞り解放(もっともF値が小さい状態)で使用する場合は、カメラのシャッター速度の上限を超えて、露出オーバーになってしまうことも少なくありません。そうしたときにNDフィルターを使用することで最適な明るさにすることが可能です

 

さすがにND1000のフィルターを常時持っておく必要はないと思いますが、ユニークな表現をしたい場合にはおすすめ。普段使いとしては、ND8~64のものを2種類程度持っておくと、低速シャッターによる写りの変化が手軽に試せて、写真撮影をより楽しいものにすることができます。

Source: GetNavi web


Source: k-design.blog





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